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KDDI xG Networksが歩む、AIでの生産性向上。ゼロベースから目指した「全社浸透」

KDDI xG Networks株式会社

auブランドで知られる通信会社KDDI株式会社と、大手SIerであるCTC(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)の合弁企業として、2019年に産声をあげたKDDI xG Networks株式会社(以下、xGN)は、「卓抜した技術力と卓越したプロセスを基礎として、先進のモバイルネットワークをタイムリーかつ安定的に提供することにより、新たなサービス価値を創造する」ことをミッションに掲げ、KDDIの大規模・高品質な通信システムの開発・運用を行っています。

2025年、同社は中期計画の一環として「AI活用による大幅な生産性向上」を掲げ、AIを全社導入することを決断。Givery AI Labと約一年に渡る挑戦を続けてきました。

技術知見・PoCノウハウ・ガイドライン、あらゆるものが必要とされる全社でのAI活用推進へ向けて、その道程にはどのような困難が待ち受けていたのか。

xGNのAI推進リーダーのお二人と伴走支援した弊社太田が、これまでを振り返りました。

Profile

写真左から、弊社 太田哲也、KDDI xG Networks株式会社の林健一様、望月隆広様

写真左から、弊社 太田哲也、KDDI xG Networks株式会社の望月隆広様、林健一様

林 健一 様

KDDI xG Networks株式会社 SRE推進部 エキスパート 2005年より通信事業に従事。固定系通信サービスの大規模プロジェクトにおいて、要件定義から立ち上げ、稼働後の課題対応まで幅広く経験。2020年10月にKDDI xG Networksへ参画し、モバイル領域へ。全社技術戦略担当、認証系システムのPM、統合監視システムを経て、2025年より全社向けAI推進業務も兼務。

※本文では敬称を略して記載しております

望月 隆広 様

KDDI xG Networks株式会社 次世代技術戦略部 副部長 2005年より通信事業に関わる。これまでに複数のプロジェクトを経験し、幅広い技術知見とプロジェクト遂行力を培う。2021年4月、KDDI xG Networksに参画。当初は、インフラ基盤開発チームのマネージャー・PMとしてのプロジェクト推進、及びネットワーク設計/構築を担当。その後、次世代技術戦略部にて全社向け企画業務、中期経営計画の策定、AI推進業務に従事。

※本文では敬称を略して記載しております

太田 哲也

株式会社ギブリー Givery AI Lab プロジェクトマネージャー ソフトウェア開発会社 元COO。多言語・マルチクラウドの豊富な開発実績を持つ。現在はギブリーの生成AIプラットフォーム開発等でPMO・テックリードを務め、アーキテクチャ設計から渉外まで、技術・ビジネス両面のアドバイザリー支援を中心に活動中。

Theme1: Background

ゼロからの基盤作り。全社の士気を上げたトップダウン・ボトムアップの施策

太田:まず、御社が本格的にAI活用を目指す判断をされた経緯からお話を始めたいと思っています。当時の状況を改めてお話いただけますか?

望月:2024年度、すぐに来るであろうAI技術の台頭や通信業界を取り巻く環境の変化など、弊社は大きな環境変化に直面していました。劇的な環境変動にスピーディーに対応し、新たな価値を生み出していかなければならない。その状況を鑑み、弊社は中期計画の迅速なバージョンアップを決断し、「AI技術による抜本的な改革」へと舵を切ったのです。

林:AI技術の活用と人材のマルチスキル化により、生産性の大幅向上を果たす。そして、そこで生み出したリソースを新たな価値創出に投じる。それが我々のミッションでした。そこで数多くのAI活用支援実績を持つギブリーさんの知恵を借りたいと思い、今回、支援業務を依頼させていただきました。

太田:重要なプロジェクトの伴走、私としても身が引き締まるような思いで臨んだことを思い出します。

望月:AIに関して弊社はゼロベースのスタートでしたから、御社の存在は本当に心強かったです。

生成AIを業務に組み込むための知見、評価・検証まで含めたAI活用のPoCのノウハウ、AIを活用するためのガイドライン、そうした土台作りからしなければならない。しかし、AI技術の変化の速度は恐ろしく速く、情報をキャッチアップして本当に有用なものを見極めていくことすら困難でしたから。

太田:確か、サポートの第1回目は「AIツールに何があるのか」というディスカッションからでしたね。ChatGPT、Claude CodeといったLLM、それからCursor、Codexといった実務ツール、RAGに至るまで。もしかすると、この時期がAIツールの変遷の最も激しい期間だったのかもしれません。

望月:基本的なAIツールの長所だけでなく、そのツールの抱える課題や限界・実績に基づいた使用感までも教えていただけて助かりました。おかげで過度な期待を抱くことなく、現実的な計画を立てることができました。

太田:ところで、AI導入においては、どの会社でも全社の機運醸成には非常に時間がかかりますが、御社は比較的スムーズだったという印象が強く残っています。何か特別な工夫をされていたのでしょうか?

望月:トップダウンとボトムアップ、両輪でアプローチすることは意識していました。

単に「AIを業務に導入しなさい」と号令をかけるだけでは、当然のことながら現場の納得感は生まれません。このメッセージが「経営層、部長層、マネージャー層もAIを実際に活用して有効だと肌身で感じた上で発信されたものなのだ」と伝わること、それが肝だと。ですから、経営陣、部長層のもとを訪ね、先行導入し触ってもらいました。

太田:直に、ですか。

望月:はい、社長や本部長、部長クラスに都度集まってもらって。林さんの作った手順書をもとに、Claude Codeでデータ分析レポート作成などを体験してもらいました。取締役層も積極的にAI活用へ関与してくださったことには、感謝しています。経営陣が自ら率先して動いてくださったことが、全社への浸透を後押しする大きな力になりました。すぐに自部門の分析資料をAIで作成したり、発表資料をClaudeで作成された部長もいて、結果として現場の士気も上がり、徐々に雰囲気が変わってきました。

太田:トップの方々がそこまで動いてくださっていたとは驚きです。

望月:ボトムアップ施策としては、社員一人ひとりのAI理解を深めるために「AIランチセッション」という会を月に数回、半年間開催しました。これは昼食を食べながら、最新の技術動向の紹介や事例共有といった情報にカジュアルに触れてもらおうという場です。

社員が「自分の業務でもAIを使ってみよう」と思えるきっかけづくりを地道に実施した点は、現在に至るポイントだったと思っています。もちろん、私一人では対応できず、一緒に企画・運用いただいたチームメンバーに感謝を伝えたいです。この場にいる林さんの強いリーダーシップと技術面でのご協力があり実現できました。

Theme2: Approach

「このまま続けても発展性がない!」活路を拓いたピボット(方向転換・軸足の変更)の内実

太田:この一年を振り返って、一番のターニングポイントはやはり中心的な使用ツールをDifyからClaude Codeに切り替えられたことだと思っているのですが、いかがでしょう。

林:仰る通りです。当時の私は「生産性を向上させる」ということは「業務フローを自動化することだ」と考えていました。そのため、業務の自動化を担当するエンジニアにDifyを使ってもらい、各社員のコア業務のワークフローを自動化するアプローチをとったのです。しかし、個別のコア業務を最適化したところで全体には大きなインパクトを与えられないのですよね。

「このまま続けていても発展性がない。より大きな生産性向上のためには、社員全員が自らの能力を拡張するようなAIの使い方をしなくては」

そう感じていたところ、「誰もが使用できて用途もコーディングに限定しないならば、Claude Codeという選択肢はどうか」という話をいただいたことで、ツール変更に踏み切れました。

ただ、いくら優秀な剣を渡しても振り方が分からないのでは役に立ちません。そこに対しては太田さんからコアメンバー向けの勉強会を開いていただき、基本から懇切丁寧に説明してもらいましたね。その知識をかみ砕いて、AIランチセッションで全体に周知していきました。

太田:最終的にはNotebookLM(現Gemini Notebook)も組み合わせるという構成になりましたね。

望月:ツールに応じて得意領域は異なるのであれば、やはり業務内容に応じて使い分けることが肝要です。会社のデータを扱うRAGの最終的な形、並びに資料作成ツールとして、NotebookLMは非常に扱いやすいツールでした。

林:実はお伝えしていなかったのですが、あれが最終形ではなかったのです。Claude Codeを試験導入したものの、非エンジニア層にとってはVS Codeを介して扱うことのハードルが高く、利用率が伸びきりませんでした。

そこで、最終的にはデスクトップアプリであるClaude Desktopに切り替えて全社導入に至りました。

太田:そうだったのですか。全社員活用を考えるならば、UI・UXが重要だった。

望月:はい。「全社員がAIを活用して生産性を上げる」ということが本来の目標ですから、「全社員が無理なく使いこなせるツールなのか」を突き詰める視点が何より重要だったと改めて思います。

太田:勉強になります。この生成AIという潮流の中では一足飛びに正解をお渡しができず、アドバイザーとしてもどかしさも感じる場面も多々ありました。

望月:いえいえ、私たちのPoCをジブンゴト化して下支えしてくださったことに、いつも感謝していました。弊社がAIの大枠を理解して、一年で自走できる環境を整えられたのも御社のサポートあってこそです。

林:その通りです。今回のPoC中には、従来、人が行っていたモバイル通信用設備の根本原因分析のAIによる自動解決にも成功しました。商用システムでの具体的な課題解決という成果も上げることができたことからも、得るものは多かったです。

太田:そのお言葉、非常に嬉しく思います。

Theme3: Vision

「AIを知る」から「全社組み込み」のフェーズへ。xGN全社員でつくる新たな価値

太田:最後にxGN社のAI活用の現在地と、この先の未来像について聞かせてください。

林:これまでは「AIを知る」という段階でしたが、ようやく生産性を大幅向上させるための基盤が整ってきました。ここからが本当のスタートです。

全社でAI駆動開発を浸透させ、全社換算約10%の生産性向上を目下の目標にしています。ゆくゆくは、望月さんが話していたように、余剰リソースを新たな価値創出に投資していきたいと考えています。

望月:「AIをどう全社の業務プロセス全体に組み込むか、どう使い倒すか」という本質的な課題に向き合う。今まさに我々は第2フェーズに入っているのだと実感しています。プロセス自体をどのように変革していくか、ユースケースをどう拡大させるかが今後の鍵となるでしょうね。

太田:新たなフェーズに入ったからこそ見えてきた課題もあるのでしょうか。

林:はい。AI活用が部門や個人の裁量に委ねられる形で急速に広がると「利用料金が想定以上に膨らんでしまう」「会社が把握していないツールが使用される」といったリスクが自ずと生まれてきます。

このようなコスト管理やガバナンスの課題に対しては、利用を過度に制限して現場のAI活用意欲を削いでしまわないようにする必要があります。バランスを意識したルール設計、モニタリング環境の構築、ツールやモデルの使い分けの浸透など、やることはまだまだあります。

望月:いずれにせよ、我々xGNが目指すのは組織全体による真の生産性向上です。「全員がAIを使うには」という視点を常に持ち、歩みを進めていくつもりです。

太田:今後もお力になれたら幸いです。お二人とも、本日は誠にありがとうございました。

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